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無常にもつるべ落としの秋の暮
秋の夕暮れの夕日は、つるべ落としです。やわらかで爽やかな夕暮れ時の秋の夕日が、アッという間に沈んでしまうことになんとも無常を感じます。
秋風や鐘の音冴える古き寺
秋の空気は、透明に冴えているかのようで、古き寺の鐘の音も他の季節の音より一層冴えたもののように聴こえ、感慨が深いのです。
ヒグラシの声が呼ぶごと風が吹く
ヒグラシのカナカナカナ・・・という趣深い鳴き声が爽やかな秋の透き通った微風を呼んだかのようで、なんとも侘びを感じました。
気がつけば里に降りたる赤トンボ
赤トンボは、暑い間は涼しい、標高の高い所で過ごし秋になり、涼しくなると里に降りてきます。赤トンボは、秋の訪れを強く感じさせます。
秋風や枯草揺れたる古き寺
枯草がそよそよとした秋風に揺れている様子にあわれを感じます。秋の風ですから、もちろん透き通った空気の秋の風で枯草が揺れているのです。
心地よく我包まるる虫の声
秋の虫の声は、やわらかでやさしい心地良さがあります。そんな秋の虫の声に包まれて、独り歩いていていると、非常に心地よく感じるのです。
爽やかに耳に残りしヒグラシや
ヒグラシのカナカナカナ・・・という独特の鳴き声は、寂しい印象もありますが、爽やかな印象もあります。爽やかさが耳に残ります。
秋の風山のほとりの禅寺や
秋の風が吹く中、山のほとりにある禅寺に思いが至りました。秋の澄んだ風と禅寺の緊張感の組み合わせに何か感慨深いものを感じます。
透き通る空気に紅く彼岸花
秋は、晴れた日は空気が透き通っているかの錯覚を覚えます。そんな中、彼岸花が咲いていると紅い色がより一層鮮やかに感じられます。
煙突の煙斜めに秋の風
秋晴れで少し弱い秋風が吹いていると爽やかで気持ちが良いものです。工場の煙突の煙も斜めに上がっている光景が妙に気になりました。
井の中の蛙の目にも天高し
井の中の蛙は、世間知らずということですが、そんな井の中の蛙の上も、天高し、と。蛙は天の高さと深さを知っているのであります。
夕暮れの寂しき雨や秋深し
夕暮れ時は寂しいものであります。そんな秋の夕暮れ時に降る雨は、他の季節と違い、ことのほか寂しきものであります。
秋風にいよいよ群れる赤トンボ
暑い間は標高の高い所で過ごした赤トンボは、秋風が涼しい季節になって沢山里に下り、秋風の中群れている様子にあわれを感じます。
彼岸花土の中には何がある
彼岸花が毎年同じ場所にお彼岸頃に花を咲かせるのは、球根が地面の下にあるからですが、地中に何か特別のものがあるかのような錯覚を覚えます。
風吹くな仲良く群れる赤とんぼ
秋風に赤トンボが群れて飛んでいる中、風が強すぎると、赤トンボ達の群れを散らしそうで、これ以上風が強くなってくれるな、と感じます。
秋晴れや棹に掛けたる洗い物
秋晴れの、からっと乾燥した透き通ったような空気のなか、棹に洗濯物が掛けてありますと、清々しい気持ちになります。
彼岸花夕日を受けて咲きにけり
秋の夕日は、やわらかでやさしいですし、侘びしくもあります。そんな夕日の中で咲いている彼岸花は、ことのほかあわれを感じさせます。
折れてなお花咲かしたる彼岸花
ある年の秋の彼岸花は、茎が途中で折れても、何とか紅い花を咲かせておりました。植物の生命力の強さを感じ、驚嘆致しました。
西の空色付きたりし秋の暮
西に陽が沈むのですが、西の空が見事な夕焼けで美しい茜色で、感激ひとしおでした。西と言えば、西方極楽浄土の方角です。
風強しいやいやをするススキの穂
風の強い時、ススキの穂は、しなやかにしなって折れないで強風を受け流してますが、いやいや強風に抵抗しているようにも見て取れました。